北九州出身の松尾スズキが描く、恋愛カタストロフィの決定版。
劇作家、演出家、俳優、小説家、映画監督としてマルチに活躍し、時代と人間の移ろい、また不変性を冷静に見つめ、観る者に鮮烈で深い印象を与えるクリエイター松尾スズキ。初演から16年経った今なお、不変的な愛のかたちを描いた代表作を、自身の演出で12年ぶりに再演。
登場人物は4人。小さな町工場を営む兄と、ある理由から兄によって監禁されている弟、兄の妻、彼女の元・担任で工場にパートとしてやってきた女。社会から弾き落とされた、あるいは自ら背を向けた彼らの発熱する愛憎は、やがて町全体へと広がっていく・・・。
愛がベルトコンベアを動かし、憎しみがスイッチを入れる。松尾スズキが描く、恋愛カタストロフィの決定版を新キャストで上演。
松尾スズキより
夏だった。片桐はいりで一本舞台を書いてくれと、演劇制作会社の社長に頼まれ、俺は笹塚の7万円のアパートで、この芝居を書いていた。
まだ、原稿用紙に鉛筆書きの時代だ。
初めて、よそのカンパニーに書き下ろす作品。俺は悪戦苦闘していた。そして、午前4時。タバコを切らせていた。
近くの自動販売機に買いに行こうと、明け方の笹塚の坂を登ろうとしたとき、坂の上に一人の男が、ゆらゆらと立っているのが見えた。
その顔には貼りついたような薄ら笑い。あきらかに、危険な香りを醸し出していた。やばいな、と、思い、別の自動販売機を探そうと踵を返した瞬間、怒鳴り声が聞こえた。
「おまえかあああああああああああああああああ!」
男は、笑いながら俺を追いかけて来た。猛スピードで。
俺は、もちろん逃げた。闇雲に逃げて、角を曲がり角を曲がり、男をまいた。
なんだったんだ。
俺は、恐怖と不条理で、まだ薄暗い笹塚の小路にしゃがみこんだ。
そこから、1週間でスラスラスラスラっと、台本が書き上がった。
それが、この芝居です。
作・演出
松尾スズキ
出演
鈴木杏、少路勇介、オクイシュージ、峯村リエ
お問い合わせ
北九州芸術劇場
TEL 093-562-2655
備考
主催/(公財)北九州市芸術文化振興財団
共催/北九州市