世界24ヵ国を席巻する話題作が待望の来日。モーツァルト×ブルックの魔術的な企み。
演劇史に名を残す偉大な演出家ピーター・ブルック。“なにもない空間”という自身の演劇論に基づくシンプルな舞台装置でありながら、俳優の肉体と小道具を巧みに利用してイマジネーション豊かな劇空間を生み出すその手法は時に魔術的とさえ言われ、世界中の観客に衝撃を与えてきました。日本でも1973年の『真夏の夜の夢』を皮切りに、上演時間9時間の大作『マハーバーラタ』や『カルメンの悲劇』などの来日公演が相次ぎ、その影響を受けた演劇人は少なくありません。
モーツァルト最晩年の傑作オペラ「魔笛」は、フランス革命後の1791年にドイツ語で書かれた“庶民のため”のジングシュピール(台詞と歌で進行する芝居)として作られ、芸術的な音楽語法と民衆的なメロディが見事に融合された人気作品です。
ブルックは、この傑作を今までにない人間讃歌にあふれた「魔笛」に生まれ変わらせました。舞台には数十本の細い竹と1台のピアノ、7人の歌手、そして2人の俳優のみ。幕間なし、約90分のこの作品は、全編においてモーツァルトのスピリットが息づいており、モーツァルトが人間に向けた愛に満ちた眼差しが凝縮されています。
本作『ピーター・ブルックの魔笛』は、2010年11月、パリのブッフ・デュ・ノール劇場で初演、同年のフランス最高の演劇賞モリエール賞の最優秀作品賞(ミュージカル部門)を受賞。現在24ヵ国を巡演中のブルックの最新作。ブルック念願とも言われる「魔笛」をどうぞお楽しみに!
あらすじ
大蛇に追われ森に迷い込んだ若き王子タミーノ。すんでのところで助かったタミーノは、夜の女王より一人娘パミーナが悪者にさらわれ捕らえられていると聞く。パミーナの肖像画を一目見て恋に落ちた王子は女王より魔法の笛を授かり、鳥刺しの青年パパゲーノと共にパミーナ救出の旅に出る。パミーナを捕らえているザラストロとは何者か。タミーノは恋する相手を救うことができるのか──。
プロフィール
ピーター・ブルック Peter Brook
1925年ロンドン生まれ。オックスフォード大学在学中、『フォースタス博士』で初演出。46年、シェイクスピア記念劇場(現RSC)において史上最年少の演出家となり『恋の骨折り損』を演出。その後も『リア王』、『真夏の夜の夢』、『アントニーとクレオパトラ』などを演出。71年、ミシェリーヌ・ロザンと共に国際演劇研究センター(C.I.R.TのちにC.I.C.Tに改称)をパリに設立。74年には、20年以上廃墟となっていたブッフ・デュ・ノール劇場を開場し、『鳥の会議』、『桜の園』、『テンペスト』、『マハーバーラタ』など話題作を次々と発表。2010年まで芸術監督として活動する。オペラの演出も手掛け、1948年、ロイヤル・オペラ・ハウスの演出家に就任、『ボリス・ゴドゥノフ』、『フィガロの結婚』、『サロメ』などを演出。ニューヨークのメトロポリタン歌劇場で『ファウスト』、『エフゲニー・オネーギン』、ブッフ・デュ・ノール劇場で『カルメンの悲劇』、『ペレアスの印象』、エクサンプロヴァンス国際音楽祭で『ドン・ジョヴァンニ』を上演する。映画監督としても活躍し、『蝿の王』、『雨のしのび逢い』、『注目すべき人々との出会い』など。主な著書に、15カ国以上に翻訳された『なにもない空間』、『秘密は何もない』、自伝『ピーター・ブルック回想録』など。
演出
ピーター・ブルック
原曲
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
翻案
ピーター・ブルック、フランク・クラウチック、マリー=エレーヌ・エティエンヌ
ピアノ演奏
レミ・アタゼイ
出演
タミーノ/ロジェ・パデュレ、エイドリアン・ストゥルーパー
パミーナ/ランカ・トゥルカノバ、ディマ・バワブ
夜の女王/レイラ・ベンハムザ、マリア・ベンディ=メラッド
パパゲーナ/マルティーヌ・ミドゥー、ベツァベー・ハース
パパゲーノ/ヴィルジル・フラネ、トマ・ドリエ
ザラストロ/ヤン・クセラ、ヴァンサン・パヴェジ
モノスタトス/ジャン=クリストフ・ボルン、ロマン・パスカル (以上、ダブルキャスト)
俳優/アブド・ウオロゲム、ステファン・スー・モンゴ
※都合により出演者等が変更になる場合がございますのでご了承ください。
お問い合わせ
北九州芸術劇場
TEL 093-562-2655
備考
主催/(財)北九州市芸術文化振興財団
共催/北九州市
後援/在日フランス大使館