笑えるトラウマ、ここにあり。
2008年6月に上演された『て』は、作・演出の岩井が母への取材を元に書き下ろし、自ら母親役を演じた、ハイバイ流壮絶ホームドラマ。
作品は瞬く間に話題を呼び、今夏より野田秀樹氏が芸術監督に就任した東京芸術劇場の「芸劇eyes」のひとつとしても上演されます。
祖母の痴呆をきっかけに集まった家族が、ぶつかったりもがいたりしながら再生しようとする様子を、息子の視点と、母の視点、双方から描きだす本作品。群像劇でありながら、主観的な視点で物語を進めていく脚本、一見重いテーマながらひとつひとつのシーンにまるでコントのように笑いをちりばめていく演出など、その構成力の高さにも注目!
作・演出/岩井秀人コメント
こんにちは。ハイバイの作と演出をやっております。岩井秀人です。
去年、北九州芸術劇場を見学させてもらった際、福岡から電車で来たのですが、電車から見える景色がどんどんと山や森になっていき、巨大な未来都市のようなものが見え、それは後になって聞いたのですがそれは「スペースワールド」という遊園地らしいのですが、正直「こんなところに劇場があるのだろうか・・」ととても心配になったことを覚えております。しかしながら、小倉の駅に着き、ぼーぜんと眺めてしまった駅回りの美しさは、武蔵小金井という、駅前に8階建ての西友と長崎屋がそびえ立っている土地で生まれ育った僕には、あまりにも衝撃的でした。そして肝心の北九州芸術劇場。ちょっと不安定な形をしておりますが、とても良い形だったので、うれしかったです。「あの『D』っぽいところの付け根で演劇をしたい。」と、素直に思いました。「D」のどこに劇場があるのか、未だ分かっていませんが。
このたび、僕のほとんど自伝的な作品である「て」を、初めての北九州での公演に持ってこれたことは、何かしらの運命だと思うので、精一杯やれればと思います。「世知辛い世の中を見つめ、笑えたら笑おうよ」がモットーなハイバイです。そのハイバイの作品の中でもとにかく強く、美しく、正しい演劇だと思います。
是非、ごらんいただければと思います。
ハイバイプロフィール
2003年に武蔵小金井(東京)で作・演出の岩井秀人を中心に結成。 岩井自身の、16歳から20歳まで引きこもりだったシリアスで個人的な体験を、演劇という装置で濾過して“生々しいけれど笑えるコメディ”に変換。自己と他者との距離感に敏感過ぎる「自意識のアンテナ」が、 あらゆる距離感を等価にする「現代口語演劇のメソッド」を介すと、独自の切実さとおかしさを発揮すること、それが意外と多くの人のシンパシーを得ることを発見しつつ、近年では岩井の世界も自分、家族、他人と広がりを見せている。代表作は「ヒッキー・カンクーントルネード」「おねがい放課後」「て」。(プロフィール作成協力:徳永京子)
作・演出
岩井秀人
出演
岩井秀人(ハイバイ)、金子岳憲(ハイバイ)、永井若葉(ハイバイ)、坂口辰平(ハイバイ)
吉田亮、青山麻紀子(boku-makuhari)、上田遥、町田水城(はえぎわ)、平原テツ
用松亮、大塚秀記、猪股俊明
お問い合わせ
北九州芸術劇場
TEL 093-562-2655
備考
企画/ハイバイ quinada
製作/ハイバイ quinada 北九州芸術劇場