そもそもハムレットは大衆娯楽演劇だったはずだ
と確信した鈴木聡が、小田島雄志監修のもと新しいハムレ ットを描きます。演出は、今や大劇場から小劇場までラブコールの絶えない山田和也。運命を背負いきれなかった男・ハムレット役は、コメディに欠かせない実力派・ 近藤芳正。今宵かつてないシェイクスピア劇が幕を開けます。
こんどのハムレットのこと (鈴木聡)
シェイクスピアは、大衆演劇のはずだよなぁ、とずいぶん前から思っていました。ハムレットの複雑な性格を必要以上に文学的に解釈したり、解釈競争や新演出競争のようになっている現状に違和感を感じていたのです。だって地球座で大人気だったんだよなぁ。難しいこと なんか全然なくて、びっくりするほど面白かったに決まってる。
映画「恋に落ちたシェイクスピア」を観て、たぶん僕らは間違ってないぞ、と思いを強くしました。ああいう劇場環境で庶民に受けた芝居なら笑いに満ちてい たに決まっている。詩的なレトリックを駆使したセリフは心地よい音楽の役割を果たしたのかもしれない。観客の欲求や快感に忠実な舞台であったと思うのです。
たとえば「ハムレットの分裂的な気質」といわれるけど、あれ実は、見せ場のバリエーションをつくるための作劇の都合ってことなんじゃないか。パーソナリ ティーの統一よりもお客さんへのサービスを優先した結果、かも知れないんですよね。文学としてよりも上演台本としてハムレットを検証してみると新しい発見が生ま れる気がしています。
ということで、エンタティメントとしての「ハムレット」を追及したい。軸はハムレットの悩みっぷり。悩みっぷりがとっても面白いハムレットです。お父さ んの亡霊に復讐しろなんていわれたんだけど、俺はそんな運命を背負いきるガラじゃない、と思ってるハムレット。彼、もともと自問自答するタイプなんだけど、この一件で拍車がかかる。もちろんその心の底にはお母さんが俗っぽいおじさんと結婚してしまったやるせなさというか絶望がある。このあたり、人情として共感できるよ うに描きたい。
また、現代とコミュニケートできるハムレットをつくる上で、「悩みを続ける勇気」「考え続けるタフさ」をフューチャーしようと思っています。現代は多様 な価値観が林立していて、ともすれば思考停止を選択しがちになっていると思うんですよね。男らしく単純な結論を出してしまうことより、女々しく考え続けることの ほうが、勇気もいるし体力も必要だと思うのです。悩み続けることがヒーローなんだ、という視点からハムレットを捉えるのも面白いんじゃないかと思います。
そんなハムレットの「悩み続けること」のシンボルが若ハゲです。幅広い観客層に「気楽に楽しめそうなハムレット」をアピールする上でも、タイトルは「ハゲレット」でいきたいと思っています。
セリフは面白くします。だいたいシェイクスピア見に行くと長ゼリ(長セリフ)で退屈するんだけど、一言も聞き漏らすまい、とお客さんに思ってもらえるよ うに書きたいと思います。単なる言葉遊びではなく、あくまで「気持ちがわかる」ように。シーンによっては、原作では独白になっているセリフを対話に書き直す工夫もしようと思っています。
娯楽大作ではありますが、自分としては、むろんそれが本質に近づくことじゃないかと思います。演劇ファンにも、普通のおばちゃんにも楽しんでもらえるハムレットを生み出したい。おそらく、かつてないほど人間くさいハムレット、になるはずです。
原作
ウィリアム・シェイクスピア「ハムレット」
翻訳・監修
小田島雄志
翻案
鈴木聡
演出
山田和也
出演
近藤芳正、笹本玲奈、陰山泰、石田圭祐、鈴木浩介、福本伸一
木村靖司、湯澤幸一郎、櫻井章善、土屋裕 一、久世星佳、ベンガル
スタッフ
美術/二村周作 照明/足立恒(インプレッション) 音響/長野朋美(オフィス新音)
衣裳/前田文子 へアメイク /佐藤裕子 演出助手/則岡正昭 舞台監督/小林清隆(ジ・アクト)
お問い合わせ
北九州芸術劇場
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