現代と重なる人間の切実な問題を浮き彫りにするギリシャ悲劇
世界各地で高い評価を受けてきた「鈴木版ギリシャ悲劇の代表作」と言われる「酒の神 ディオニュソス」。宗教と政治の争いに巻き込まれて没落する家族の姿を通じて、宗教問題やテロなど現在起こっている事件を連想させる悲惨な人間ドラマです。現代社会に潜む危機や恐怖を浮き彫りにしたとして大きな反響を呼び、話題となっている作品です。
あらすじ
酒の神ディオニュソスは、アジアの町々を遍歴し、民を自らの教えに従わせたのち、その宗教をギリシアの地に広めようとテーバイの町にやってくる。だが、テーバイの王ペンテウスは、ディオニュソスを神と認めようとしない。そこで、ディオニュソスはペンテウスの母親をはじめとしてテーバイの女たちを彼の教えに帰依させ、山に集めてしまう。ペンテウスは、ディオニュソスの教えがテーバイの市民全体に浸透することを恐れ、ディオニュソスを捕らえようとするが、逆にその魔力に魅せられ、ついには彼の案内で山中の女を見に出かける。そして、母親と信女たちに五体を引き裂かれ、殺されてしまう。母親アガウエは狂信から醒め、ディオニュソスの教えに対する恨みの言葉を口にしながら放浪の旅に出る。
酒と演劇の神・ディオニュソス(Dionysus)
別名、バッコス(バッカス)とも呼ばれているディオニュソスは、ぶどう酒を作り出した神として知られている。集団的な狂乱と陶酔を伴う祭儀は、女たちによって熱狂的に支持され、テーバイの王ペンテウスの弾圧にもかかわらず、ギリシア中に広まっていった。故郷テーバイに教えを広めに戻ったディオニュソスとペンテウスの対立を描いたのがエウリピデスの「バッコスの信女」である。また、ディオニュソスは演劇の神ともされている。
原作
エウリピデス
演出
鈴木忠志
主演
静岡県舞台芸術センター〔SPAC〕専属俳優、エレン・ローレン
お問い合わせ
北九州芸術劇場
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