私はもう待たない!・・・時は動き続ける。
なんの変哲もないアパートに住む哲子が、食べるばかりに用意された夕食を残して姿を消した。母親、刑事、友人、大家が哲子を探しに訪れる。ひとり、部屋に残った友人の考子が、突然やって来た不思議なミステリーゾーンをくぐり抜けると、そこはシンデレラの世界だった。
シンデレラは未だに何かを、誰かを待ちながら床を磨き続けていた。“あまり長いこと待っていたものだから、何を待っているのかわからなくなった。でも、とにかく何かとても良いものに違いない”・・・そう自分に信じ込ませるように床を磨いているシンデレラは、何をしたいのか、何が欲しいのかわからないまま日常を送る哲子の姿そのものだった。
「シンデレラが本当にほしかったものはなんだったんだろう?」青い鳥がその謎の答えを見つけた時、シンデレラはシンデレラでなくなる。そして、私たちは“青い鳥のシンデレラ”にさようならする。
劇評 (毎日新聞 東海面)
女性だけのメンバーで、自分たちの切実な思いを結晶化し、みずみずしい舞台を作ってきた劇団。記念の公演は最も人気の高い作品の19年ぶりの再演だ。さが、「ファイナル」として決着をつけたところに、この劇団らしい心意気がうかがえる。アパートの一室から姿を消した女性と、彼女を探しに行く友人の旅を通して、平凡な日々の中で何かを待ち、探し続ける思いを象徴する。ヒロインの心の反映である「シンデレラ」のパロディーを始め、<待つこと><探すこと>のさまざまなシーンが、遊び心に満ちて繰り広げられる。さらに、おしゃれで美しい衣裳でのダンスの数々。舞台は終始華やかだ。・・・すてきな大人のファイナルだ。
作
市堂令
演出
芹川藍
出演
天光眞弓、芹川 藍、葛西佐紀、高彩裕子、近内仁子、渡辺なほみ、森本恵美
特別出演
金利惠(韓国舞踊家)
在日韓国人2世として東京で生まれ育つ。5才よりバレエを習う。20歳で初めて母国訪問。直後に韓国伝統舞踊に触れ、永い眠りから血が目覚めるのを感じる。‘81、単身帰国。人間文化財李梅芳の門下に入り今日に至る。海外出身の僑胞として初めて重要無形文化財第97号「サルプリ舞」。27号「僧舞」履修者に指定される。‘03東京・福岡で韓舞「白い道成寺」公演を行う。ソウル在住。
スタッフ
舞台美術/宇野萬 照明/沖野隆一 舞台監督/木村力 技術監督/小林清隆
衣裳 /葛西佐紀、森本恵美 音響プラン/芹川藍 小道具/天光眞弓、高彩裕子
演出助手/ 渡辺なほみ 照明操作/野中千絵 音響操作/尾林真理
音響協力/水越佳一、茶木陽子(モックサウンド) 舞台スタッフ/恩田義幸
お問い合わせ
北九州芸術劇場
TEL 093-562-2655