【協働先 まち】 浅田政志とつくるドラマチックロケーション

何気ない日常風景を写真で“劇的”に

誰もが思わず笑顔になるユニークな写真を撮影する人気写真家・浅田政志さんと一緒に、旦過市場や門司港など“北九州ならでは”の魅力的なロケーションを写真で劇的<ドラマチック>に変身させるプロジェクト。浅田さんと出演する市民のみなさんでアイディアを出し合いながら、とっておきの一瞬を生み出します。

第1回「ドラマチックオーディエンス!」

初回は北九州芸術劇場で『わたしだけの一張羅』をテーマに撮影!モデル一人ひとり、エピソードや想い入れがある衣装を身にまとい、舞台上より面白いドラマチックな観客を演じました。普段は「芝居を観る」劇場空間で、「観られる客席」を写真で切り取った1枚です。

[会場]北九州芸術劇場・大ホール
[撮影日時]2012年11月20日(火)9:30~15:30

▼完成写真

第2回「ドラマチックモノレール!」

北九州が日本初である都市モノレールを舞台に『一風変わった出勤風景』をテーマに撮影。いたずらっこの魔女が、魔法をかけるとあら大変!いつも互いに目線をあわせず退屈そうだった乗客たちが、突然変身!滅茶苦茶な行動を取り始めてしまいました!!普段なら絶対にありえない、愉快な物語を詰めこんだ連作です。

[会場]北九州モノレール内
[撮影日時]2013年11月4日(月祝)9:30~15:30

▼完成写真

▼撮影風景

第3回「ドラマチックキックオフ!」

この年度から開始した新しい芸術フェスティバル「北九州芸術工業地帯」の開幕にちなみ『キックオフ』をテーマに写真を撮影!北九州が工業で発展した都市ということで、モデルはヘルメットと作業着を着用。まるで本当にサッカーの試合をしているような、真剣で臨場感たっぷりの“瞬間”を切り取った写真となりました。

[会場]門司陸上競技場
[撮影日時]2014年11月8日(土)9:30~14:00

▼完成写真

▼撮影風景

第4回「ドラマチックロケーション@門司港」

明治・大正時代に貿易港として栄えた面影を今も残す、門司港近隣の歴史建築物を舞台に、『ロミオとジュリエット』をテーマに撮影。文化経済人に愛された料亭や、100年以上稼動している駅舎など、歴史的建築で撮影することで、シェイクスピアの名作が持つ重厚感を表現するシリーズとなりました。

[会場]門司港(三宜楼・旧JR九州ビル・門司港駅)
[撮影日時]2015年8月23日(日)15:00~22:00

▼完成写真

▼撮影風景

第5回「ドラマチックロケーション@旦過市場」

約100年以上前、大正時代から北九州の食文化を支える・旦過市場。昭和の香りが色濃く漂う、味わい深い商店街で『行き交う人と時間』をテーマにした写真に挑戦。過去・現在・未来、様々な時代の姿を1枚の写真に重ねることで、時間を経ても、同じようにこの街に人々が生きている。この場所が歩んできた時代を表現した作品です。

[会場]旦過市場
[撮影日程]2016年2月5日(日)10:00~18:00

▼完成写真

▼撮影風景

第6回「ドラマチックロケーション@スペースワールド」

北九州市八幡東区にあるテーマパーク“スペースワールド”。家族旅行や修学旅行、デートや成人式など人生の様々な節目で、北九州市民が足を運んだスペースワールドを舞台に『ハレの日』をテーマに撮影しました。「お遊戯会」「卒業式」「成人式」それぞれの年代で最高に輝く瞬間と、次の世界へ踏み出す力強さや希望を表現した作品です。

[会場]スペースワールド
[撮影日程]2017年11月10日(金)10:00~18:00

▼完成写真

▼撮影風景

アーティスト

浅田政志

1979年三重県生まれ。2000年日本写真映像専門学校 研究科卒業。2003年東京へ上京。2007年独立。2009年第34回木村伊兵衛写真賞受賞。2010年『Tsu Family Land 浅田政志写真展』(三重県立美術館)著書に『NEW LIFE』(赤々舎)、『家族新聞』(幻冬舎)、『八戸レビュウ』 (美術出版社)、『くまモン、どこいくの?』(飛鳥新社)、『家族写真は「  」である』(亜紀書房)、『卒業写真の宿題』(赤々舎)、『アルバムのチカラ』(赤々舎)などがある。

浅田政志インタビュー(2015年)

-写真家・浅田政志さんが、市民とともに北九州の日常にあるロケーションを“劇的な”ワンシーンへと変身させるプロジェクトも第4弾となりました。浅田さんにとって、今回の作品づくりはいかがでしたか?
これまで都市モノレールやサッカーの競技場などで撮影させていただきましたが、今回の舞台は門司港。カメラを持って歩くには最高の街だな、と思いました。元料亭の三宜楼では百畳間と言われる大広間で撮影。ここは今まで僕が経験した中では最も広い和室で、建物の設えも本当に素敵でした。旧JR九州ビルでは、普段は入ることの出来ない屋上で。対岸の下関市や夜景を身近に感じられる中での撮影となりました。最後に撮ったのは、JR門司港駅のホーム。夜とはいえ電車のある時間帯だったので、降りる人から「何やってるんだろう?」という視線も感じながらの楽しい撮影でした。

-今回テーマとなったドラマは、ちょうど撮影時期に北九州芸術劇場でも上演された「ロミオとジュリエット」。来年シェイクスピアが没後400年を迎えることもあり、舞台の主要3シーンをそれぞれの場所で撮影しようということになりました。劇場でお芝居を観劇した人たちが、自分たちの住む街を舞台に「演じて遊ぶ」─そんなストーリーもこめられているんですよね。

そうそう。三宜楼の百畳間ではロミオとジュリエットの出会いのシーンをやって、旧JR九州ビルの屋上では決闘のシーン。門司港駅のホームでは、ロミオもジュリエットも死んでしまうラストシーンを撮影しました。3つのシーンを創ることは劇場の方々と相談して事前に決めていたんですが、実際の構図やポーズなどは現地で参加者の人たちと一緒に創りあげていくカタチで。実は配役も当日、「ロミオをやりたい人?ジュリエットは?」と手を挙げてもらって決めたんです。参加者の方は特に演劇に関わっている人ではないんですが、ポーズはそれぞれ皆さんで考えて演じてもらって。なので「写真を撮られる」というよりも、一枚の写真を一緒にゼロから創りあげていく感じかな。今はデジタルカメラなので、4〜5枚撮っては写真を見ながらみんなで細かいところをチェックして。「どうしたらもっと伝わるか?」─ポーズや配置を変えてみたり、お互い意見を出し合いながらまた撮ってみる。そういう作業を繰り返しました。


-そうした撮り方は、写真集「浅田家」の頃から変わらないスタイルなのでしょうか?

背景やシーンを演出して撮影するセットアップという手法は、「浅田家」で自分の家族を撮り始めた頃から自分の中ではしっくりきているスタイルですね。このやり方の場合、どういう写真が撮りたいのか、撮影する自分一人で考えるのではなく、写るメンバーたちと一緒に考える。セットアップなので背景の作り込みはある程度はするんですが、シーンの展開やポーズ、構図などはその場での参加者全員と掛け合いしながら決めていくんです。そうすると、撮る人と撮られる人という垣根を越えて、一緒に創っていく仲間という関係性になる。この1枚は、僕が撮ったというよりも、みんなで創った「すごい1枚」になるんです。「プロにいい瞬間を撮ってもらう」という相手まかせではなく、集まったみんなで考えて、何時間もかけて汗かきながら、たった3枚の写真を創りあげる。今はデジカメで誰もが気軽にたくさん写真を撮れる時代ですが、そんな中で今回のような作品はズシッと重く、かけがえのない3枚になったんじゃないかと思います。

-写真の持つ力、って何なのでしょう?

こういうやり方で撮り終わった後には、何かを一緒に成し遂げた一歩深い関係性になることが多いですよね。短い時間の中なんだけど、写真を創るという体験を通して、そこで交わされていた会話以上にギュッと凝縮された関係性が立ち上るというか。たとえば、「写真集・浅田家」の中では、全員で消防服を着て消防車の前で撮影したことがあるんです。本物の消防士さんに見られながら恥ずかしかった部分もあるんだけど、終わって車で一緒に帰る時は家族の誰もが無言だけど何となく達成感を感じているのが伝わってきたりとか。家族みんなで身体を動かして、時には馬鹿馬鹿しいほどのパフォーマンスをして、いつもの生活の中では味わえないような体験をする。それは、家族の関係性を深めたいからやったわけではないんですが、7年間それを繰り返していくうちに結果的に家族の関係性も変わっていった。当初はまったく意識していなかったことですが、そういう副産物が実感できた時、何か写真以上のものが得られたような気がしました。もし最悪、今その「浅田家」のネガやプリントがすべて無くなってしまったとしても、その関係性は絶対に消えて無くならない。人と人との関係性を活性化したり、変えたりできる「写真」が、自分にとってものすごく意味のある存在になっていったんです。


-今回のプロジェクトのような作品づくりを通して、浅田さんが特に感じていることは?

たとえば映画や演劇の場合、始まれば終わりまで長い時間演じてないといけないんですが、写真はシャッターを切るほんの100分の1秒とか250分の1秒くらいですからね。ものすごい一瞬だけその役になりきって、それを何回か繰り返せばいいので、演じるという表現経験のない方にとってもハードルが低いんじゃないかと思います。また、参加する人によって全然違う作品になってしまうのも面白いところ。どんな仕上がりになるのか、自分でもまったく読めないくらい未知数。想定外になることが多いので、撮れた写真をホテルに戻って一人で見返している時が僕の密かな楽しみですね(笑)。たとえば、今回のように大きなポスターやチラシを創るなど目標とするゴールがあって、「みんなでいい写真を撮ろうぜ!」と一生懸命になる。ものすごく弾けてみたり、それもみんなで笑いあったり。一期一会、「運命共同体」としての奇跡がそこにはあると思うんですね。そのメンバーじゃないと絶対に創れない写真。その現場と作品に巡り会えた奇跡的な感動、というのかな。

-今後の展開や目標みたいなものがありましたら…

写真をやってて良かったと思うのは、撮影がなければ行かないような場所に行って、撮影がなければ出会わなかった人たちと出会えること。実はこれは密かな野望なんですが、僕に撮られたことがある人が、日本一多い写真家になりたいんです。「お前も撮られたことあるの?オレも!」みたいな(笑)。そういう点でも今回のようなワークショップはいい機会だと思っています。ここ数年、ワークショップって増えてきてますよね。普段の生活とはちょっと違う感覚が味わえて、新たな自分に出会える場所。日常に楽しみが増えたり、自分の可能性を試してみたり、発見したり。それがワークショップのいいところ。別に写真じゃなくても演劇でもダンスでもよくて、こういうワークショップに参加していろんなことを分かち合える人たちが増えていくと、日本も少しずつ変わっていくんじゃないかな、と思います。北九州でやってみたいのは、工場地帯の夜景での撮影。僕の地元も工場地帯(三重県四日市市)なので親近感があるんですね。もう一つは、最大限の人数で撮ってみたい。これまで北九州では50人くらいでの撮影が最大ですか?たとえば100人以上で撮影したらどんな風に出来るんだろうとか。考えるだけでも楽しくなってきますね。

-写真作品はこの先50年、100年経った後にもきっと残っていきますね。写真と演劇が交わる作品が、また一つこの街で生まれたことは劇場にとっても嬉しいところです。これからの可能性も楽しみにしています。ありがとうございました。(2015年 インタビュー:重岡美千代)

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